ホイアンのカオラウは、ダナン市ホイアン地区の「美味佳肴(こうりょうびみ)」とも称される料理です。

カオラウの麺づくりは非常に手間のかかる工程を経て完成します。フォーの麺とは異なり、まずはダナン産の純粋な米を選びます。しかも、古すぎる米でも新米でもなく、ちょうど良い熟成度の米でなければなりません。そうしてこそ、カオラウの麺は柔らかさと弾力を兼ね備え、中部特有の米の香りを放つのです。さらに、この米はチャン島(Cù Lao Chàm)の灰汁に浸され、うっすらウコン色を帯びたような淡い黄色になります。
麺生地をこねるための水も特別で、必ずホイアンの古井戸「バレー井戸(Bá Lễ)」の水を用います。この井戸水に含まれる独特の成分が、麺をしなやかでコシのある仕上がりにするためです。そのため、ホイアンを離れた職人が同じ製法で作ろうとしても、この井戸水がなければ本物のカオラウを再現できないといわれています。
ミークアン、チキンライス、バイントー、バインボットロック、バインベオ…といった中部の名物料理は各地で味わえますが、カオラウだけはホイアンでしか堪能できません。17世紀、グエン主がホイアン港での交易を許可した時代に、中国人や日本人の商人が集まり暮らすようになったことで、「美味佳肴(こうりょうびみ)」と呼ばれるこのカオラウが誕生したと伝えられています。
製麺工程の中で最も重要なのは、生地を「乾いていながらも粘り強く」こね上げる独自の技術です。これは製品の品質を左右する最大の秘訣とされます。フォーやブン、バインダのように生地を流して蒸すのではなく、カオラウはこねた生地を薄く延ばし、蒸し上げてから太めの麺に切り出すという独特の方法で仕上げられるのです。


カオラウを味わう際に、香草が欠けてしまうのは大きな残念です。カオラウに添える香草は全部で12種類あり、ラウ・トム(香草)、ラウ・クエ(バジル)、カイ・クック(シュンギク)、ラウ・ダン(苦菜)、ンゴー(コリアンダー)、モヤシ、レタス、ディエップカー(ドクダミ)、若菜、バナナの花、キュウリ、すっぱいカタバミがあります。
しかし、欠かせない基本の3種類は、シュンギク(カイ・クック)、苦菜(ラウ・ダン)、バジル(ラウ・クエ)です。
カオラウに欠かせないチャーシューも、丁寧に選ばれた豚の赤身肉を大きな塊のまま使って調理されます。豚肉は塊のまま塩や魚醤、五香粉でしっかりと味付けされ、弱火で煮込まれます。肉が程よく火が通ったら取り出し、残った煮汁にトマトや玉ねぎのみじん切り、油を加えてさらに煮込み、ソースに仕上げます。
この特製チャーシューこそがカオラウを特別なものにしている要素です。程よく火が通った肉は柔らかく、レンガ色を帯びた鮮やかな赤色で、見た目にも非常に食欲をそそります。
食べるとき、カオラウの肉の風味は完全にベトナム風というわけでもなく、かといって広東、福建、潮州や日本の料理とも違う独特の味わいであることに気づきます。それはまさにホイアン旧市街だけの特有の風味といえるでしょう。
一杯のカオラウを仕上げる際、料理人はまず麺の一部を短く切り、揚げてサクサクの“トッピング麺”を作り、それをピーナッツと一緒に炒って香ばしくし、どっさりと麺の上にのせます。その後、縁に赤い色を帯びたチャーシューの薄切りを美しく並べ、最後に特製のソースをかけます。
食べるときは全体をよく混ぜて味をなじませるのがポイントです。カオラウは通常、香ばしいゴマをたっぷり振りかけた厚めの米せんべい(バインダー・ヌオン)と一緒に食べます。また、カオラウの大きな特徴は、フォーやミークアンのようにスープを使わず、ほんの2~3さじの濃厚なソースだけで仕上げることです。そのため、濃厚でコクのある独特の味わいが保たれます。濃い味を好む人は、さらに魚醤や醤油を加えて楽しむこともできます。

言うなれば、カオラウを味わうことは、五感すべてを呼び覚ます体験です。麺をすする「ズズッ」という音、魚醤や醤油の香り、香ばしいラードの風味、エビやチャーシューの甘みが重なり合い、さらに香草の辛味・苦味・渋みが調和して、一杯の中に多彩な味わいが広がります。その余韻は、ホイアンのカオラウでしか感じられない独特のものです。
かつて、カオラウは高級料理と見なされており、ダナンの農村の人々はホイアンへ行く機会があると、一度はこのカオラウを食べてみたい、そして家族にも持ち帰って食べさせたいと願ったものでした。今日では、この料理はホイアンの街中のあらゆる食堂で広く提供され、高級店から庶民的なお店まで楽しむことができます。旧市街を散策して疲れた後には、ぜひ少し時間をとって、この美味しくも唯一無二の料理を味わってみてください。
ダナン市観光促進センター