7月を迎え、真夏の日差しに包まれるこの季節、ベトナムの人々は民族の歴史に刻まれた尊い記憶へと静かに思いを馳せます。この時期は過ぎ去った歳月を振り返るだけでなく、祖国のために青春を捧げ、命を懸けて平和への願いを未来へと託した先人たちの、静かでありながらも尊い犠牲に、ベトナムの人々一人ひとりが深い感謝と敬意を捧げる大切な機会でもあります。
ベトナム中部の歴史を刻んできたダナンでは、7月に歴史をたどる旅がひときわ深い意味を持ちます。ハン川沿いに広がる近代的な街並みの一方で、市内には足を止めて線香を手向け、歴史に耳を傾けながら、独立と自由の尊さに静かに思いを馳せることのできる場所が今も大切に受け継がれています。
ベトナムの母たちの深い愛と献身をたたえる記念碑や、革命の歴史を伝える博物館、地下に静かに広がる地下トンネル、そして祖国のために命を捧げた英雄烈士たちの名が刻まれた広場や慰霊碑。それぞれの場所は、単なる観光スポットではありません。そこには歴史の記憶が今も息づき、訪れる人々は厳かな空気の中で過去に思いを馳せ、先人たちの歩みと犠牲に敬意を抱きながら、深い感動と誇りを感じることができます。

7月の追悼の季節は、今日の平和が数え切れないほどの犠牲の上に築かれていることを私たちに改めて思い起こさせてくれます。広く整備された道路や美しく輝く橋、日々発展を続ける街の姿。そのすべては、祖国を愛する心、不屈の精神、そして先人たちの尊い犠牲の上に築かれたものです。ダナンの歴史ゆかりの地を巡る旅は、歴史を学ぶだけでなく、誇りと感謝の気持ちを胸に刻み、ベトナムに受け継がれる「水を飲むときは、その源(源流)を想う(恩を忘れない)」という精神を未来へつないでいく大切さを改めて感じる機会となるでしょう。
この夏は、歴史を一歩一歩辿りながら、先人たちへ思いを馳せる旅をしてみませんか。記念碑や博物館、地下トンネル、慰霊の場に立つとき、歴史は決して過去のものではなく、今を静かに照らし、未来への希望と歩み続ける力を与えてくれる存在であることに気づかされるはずです。
ベトナム英雄の母の記念碑群
歴史をたどる旅において、「ベトナム英雄の母の記念碑群」は、ひときわ神聖な意味を持つ場所です。国家的な文化施設であるこの記念碑群は、ベトナム英雄の母らの功績をたたえるだけでなく、深い愛情と忍耐、そして静かな強さを備えたベトナムの母の姿を象徴しています。
記念碑群は、クアンフー地区のカム山に位置し、総面積16ヘクタールを超える広大な敷地に建てられています。そのモデルとなったのは、9人の息子、1人の娘婿、そして2人の孫を戦争で失ったグエン・ティ・トゥー(Nguyễn Thị Thứ)氏の肖像です。雄大な空間にそびえる母の姿は、まるで神聖な山のように両腕を大きく広げ、祖国の子どもたちを優しく包み込んでいます。ここでは、戦争による犠牲は数字では表せない重みを持ち、一人ひとりの人生や記憶として訪れる人々の胸に静かに語りかけます。

記念碑内部には、「ベトナム英雄の母の記念館」が設けられており、全国で約5万人におよぶベトナム英雄の母たちの名前が刻まれています。また、兵士たちに届ける食事を作るために使われた銅鍋や、戦時中に布を織るための織機、祭壇に供えられた花瓶などの写真や資料、実物資料も展示されています。これらは、夫や息子を戦地へ送り出すだけでなく、自らの深い悲しみを胸に抱えながら、祖国への揺るぎない信念を支え続けた母親たちの姿を今に伝えています。
母の像の前で線香を手向け、そして静かに祈りを捧げる。それら一連の行いは、今日の平和を築いた人々の尊い犠牲に感謝を捧げる大切な時間となるでしょう。
ホーチミン博物館(第5軍区支館)・第5軍区博物館
ダナン市中心部に位置するホーチミン博物館(第5軍区支館)と第5軍区博物館は、ベトナム建国と祖国防衛の歴史、そして中部・中部高原地域を管轄する第5軍区の軍民が歩んできた歴史を学ぶことができる貴重な施設です。5,000㎡を超える広大な敷地には、革命の歴史や戦いの軌跡、そして中部・中部高原の人々や兵士たちがホー・チ・ミン主席に寄せた揺るぎない敬愛の念をたどる展示が広がっています。
ホーチミン博物館(第5軍区支館)では、民族解放の英雄であり世界文化の偉人として知られるホー・チ・ミン主席の生涯と革命活動を紹介する写真や資料、実物資料を展示しています。また、ホー・チ・ミン主席とヴォー・グエン・ザップ大将の記念展示室に加え、ホー・チ・ミン主席が暮らした高床式住居を原寸大で復元した展示も設けられており、その質素な暮らしぶりや思想、そして第5軍区の人々や兵士たちに寄せた深い思いに触れることができます。

一方、第5軍区博物館では、第5軍区の軍隊が創設され、発展を遂げてきた歩みを伝える写真や資料、実物資料を数多く展示しています。屋外には大型の展示物が並び、ベトナム独立戦争とベトナム戦争の二度にわたる抗戦で第5軍区の軍民が使用した兵器や車両、鹵獲(ろかく)した装備などを見ることができます。これらは歴史を物語る貴重な遺産であると同時に、「人民戦争」の戦略や、人々の団結、そして革命の伝統を受け継ぐこの地域の不屈の精神を今に伝える証でもあります。
とりわけ若い世代にとって、この博物館は歴史をより身近に感じられる場所です。一つひとつの展示資料や写真、そこに刻まれた物語は、今日の独立と平和が、祖国のために生き、戦い抜いた人々の計り知れない苦難と犠牲、そして勇気の上に築かれたものであることを静かに語りかけています。

ダナン博物館
ダナン博物館は、ダナンの歴史や文化、そして街の発展の歩みを深く知りたい人にぜひ訪れてほしいスポットです。博物館はバクダン通りとチャンフー通りに位置し、とりわけバクダン通りの建物は、それ自体が「歴史を物語る展示物」ともいえる存在であり、都市の記憶を今に伝えるとともに、ダナンの歩みを見守ってきた歴史の証人でもあります。
ハン川に面したバクダン通りの建物は、フランス統治時代にはトゥーラン市長(Đốc lý Tourane)の執務施設として使用され、その後はダナン市庁舎となりました。そして1975年3月29日、ダナン解放の日には革命政府の行政機関として使用され、街の歴史的な転換点を見届けました。そのため、ダナン博物館は、展示を見るだけではなく、ダナンの歴史と記憶に触れることのできる特別な場所となっています。

約2万7,000点に及ぶ資料・収蔵品の中から厳選された約3,000点を展示するダナン博物館では、従来の展示手法に加え、3Dマッピング映像や3D映像、記録映像などの最新技術を活用し、ダナンの自然、歴史、文化、そして未来へ向かって発展を続ける街の歩みを臨場感豊かに紹介しています。
歴史をたどる旅において、ダナン博物館は過去から現在へと続く街の歩みを振り返ることのできる場所です。川沿いの港町として発展し、戦争や時代の大きな変化を乗り越えながら、今日では中部を代表する経済・社会の中心都市へと成長したダナン。その歩みをたどることで、歴史への誇りと未来への希望が受け継がれ、さらなる発展を支える力となっていることを感じることができます。
ダナン市慰霊碑・3月29日広場
近代的な都市景観の中に佇むダナン市慰霊碑と3月29日広場は、民族解放闘争や街の建設・防衛のために尊い命を捧げた英雄烈士たちを追悼し、その功績を後世に伝える厳かな場所です。
この慰霊碑は、市民から「9月2日の記念碑」の愛称でも親しまれ、先人たちへの深い感謝の思いを象徴しています。力強く天に向かってそびえ立つ碑には、「Tổ quốc ghi công(祖国はその功績を称える)」の文字が刻まれています。碑の前には香炉や献花台が設けられた追悼空間が広がり、訪れる人々はここで線香を手向け、祖国の独立と平和のために青春と命を捧げた人々の尊い功績に静かに思いを馳せます。

慰霊碑の背後には穏やかに流れるハン川が広がり、正面にはベトナムの歴史における重要な節目である「9月2日」にちなんで名付けられた9月2日通りが延びています。慰霊碑の荘厳な佇まいと広々とした広場、そして都市景観が調和し、現在では市民の心のよりどころとして親しまれる特別な空間となっています。
このダナン市慰霊碑を訪れた際には、ぜひ静かに足を止め、平和の尊さに思いを馳せてみてください。日々発展を続ける街の風景の向こうには、数え切れないほどの先人たちの尊い犠牲があります。その礎の上で、今日のダナンは誇りと感謝の心を胸に、未来へ向かって歩み続けているのです。
キーアイン地下トンネル
博物館や記念碑が「見る」ことで歴史を学ぶ場所であるならば、キーアイン地下トンネルは、実際に地下へ足を踏み入れ、戦時下の人々の暮らしを体感できる場所です。
バンタック街区の海岸沿いの砂地に築かれたキーアイン地下トンネルは、歴史的な遺跡であると同時に、戦争の記憶を今に伝える貴重な場所でもあります。1965年から1967年にかけて建設されたこの地下トンネルは、総延長約32kmを誇り、ベトナム国内でも最大級の地下トンネル網の一つとして知られています。トンネル内には、救護室や作戦室、指揮所、食料庫など、さまざまな機能を持つ空間が設けられ、戦時下の生活と戦闘を支えるための一体的な地下ネットワークが築かれていました。

キーアイン地下トンネルの大きな特徴は、その地下壕が人々の暮らしと切り離された存在ではなかったことです。地下道は家屋やかまど、井戸、村の集会所の地下へと張り巡らされ、人々の日常と一体となっていました。その地下では暮らしが営まれ、暗く狭い空間の中でも、人々は決して希望を失うことはありませんでした。地下トンネルは「地下の砦」として、軍と住民がともに身を守り、戦いを続け、クアンナム・ダナンの地に刻まれた不屈の歴史を支える拠点となったのです。
現在は地下トンネルの一部が復元され、一般公開されています。約110メートルにわたる地下道を歩くと、訪れる人々は歴史の重みを肌で感じることができます。地下へ足を踏み入れると、光は次第に遠のき、周囲の音も静まり返ります。一歩一歩進むたびに、まるで歴史の記憶に触れているかのような感覚に包まれます。大地の奥深くに流れる静けさそのものが、人々が揺るぎない信念を胸に生き抜き、互いを守りながら戦った時代を静かに物語っています。
キーアイン地下トンネルを訪れた際には、ベトナム英雄の母の記念碑群やヴォー・チ・コン記念館、ダナン博物館第2館、さらに市南部に点在する歴史・文化施設とあわせて巡るのもおすすめです。これらを結ぶことで、歴史をたどる奥深い周遊ルートとなり、団体旅行や学校の研修旅行はもちろん、この地の歴史への理解をより深めたい方にとっても充実したコースになるでしょう。
「歴史をたどる旅」モデルコース
ダナンで歴史をたどる旅を楽しむなら、まずは市内中心部にあるダナン博物館から訪れてみましょう。ダナンの歴史や文化、そして街の発展の歩みを知ることで、この地への理解をより深めることができます。続いて、ホーチミン博物館(第5軍区支館)と第5軍区博物館を巡れば、革命の歴史や人々の歩み、第5軍区の軍民とホー・チ・ミン主席との深い結びつきについて学ぶことができます。
午後は、ダナン市慰霊碑と3月29日広場を訪れ、祖国のために命を捧げた英雄烈士たちに静かに思いを馳せるひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。さらに市南部まで足を延ばせば、ベトナム英雄の母の記念碑群やキーアイン地下トンネルを巡れます。戦争の記憶と先人たちの歩みに触れながら、歴史への理解を深めるとともに、平和への感謝の心をあらためて感じられる意義深い旅となるでしょう。

7月は、過去を振り返るだけでなく、現在、そして未来への責任について改めて考える月でもあります。ダナンの歴史ゆかりの地を巡ることで、平和は決して当たり前にあるものではなく、独立と自由は数え切れないほどの尊い犠牲の上に築かれていることを、あらためて実感できるはずです。
博物館や記念碑、地下トンネルで手向ける線香や一歩一歩の足跡、そして戦争を生き抜いた母親や兵士、地域の人々の物語に触れるたびに、ダナンでの「歴史をたどる旅」は、感謝の心を育む旅へと変わっていきます。その旅を通して、ベトナムの歴史への理解を深めるとともに、今ある平和と日々の暮らしの尊さを見つめ直し、先人たちが受け継いできた祖国を愛する心や人を思いやる精神、そして互いを支え合う心を、未来へとつないでいく大切さを感じられることでしょう。
ダナン観光促進センター







