バフオンチャオ夫人祭りは、ダナンの人々にとって特色ある古くからの民間祭りです。
祭りは毎年旧暦2月25日に、クアンナム省ダイロック県ダイカン社カーンミー村にあるバフオンチャオ夫人祠堂(現在のダナン市ヴーザ社に所属)で開催されます。

これは、地元の人々がバフオンチャオ夫人の功徳を追憶し、感謝を捧げる機会であり、夫人は人々から尊敬される女神として崇められ、豊かな雨風、豊作、そして故郷での平和で繁栄した生活を祈願する場です。祭りはまた、国家の安泰を願う人々の願望から生まれ、クアン地方における地域間の文化交流や共同体結束の精神を示す証でもあります。数百年の歴史を持つバフオンチャオ夫人祭りは、現在ではダナン市民にとって重要な精神文化イベントとなり、「水を飲むときはその源を思う」という伝統を色濃く体現しています。
起源と伝説:バ・フォンチャオ夫人
バ・フォンチャオ夫人は「バ・チョードゥオック(Bà Chợ Được)」とも呼ばれ、本名はグエン・ティ・クア(Nguyễn Thị Của)。1800年2月25日にフォンチャオ村(当時のフィエムアイ州、現在のダイロック社)で生まれたと伝えられています。
伝承によると、夫人は天界から降りた天女であり、生まれた瞬間には白雲が一帯を覆う吉兆が現れたといわれています。成長すると、彼女は薬草を使って病を治し、人々を助けると同時に悪を懲らしめ、多くの人々から敬愛と尊敬を集めました。
しかし、夫人は人間界にわずか17年しか留まらず、早世しました。死後もその霊魂はしばしば顕現し、善良な人々を守護したとされます。その加護のおかげで、ヴーザ川沿いのフィエムアイの漁村は次第に賑わい、豊かな土地へと発展していきました。
その恩徳を忘れないために、村人たちは夫人の生家であるフォンチャオの地に祠殿(ディン)を建立し、祭祀を行うようになりました。

「バフオンチャオ上等神の冊封」
神蹟によれば、故郷で顕聖した後、バフオンチャオ夫人はさらにフオックアム(現在のタンアン社)に遊化し、民に市場を開かせ、売買がますます繁盛するように助けたと伝えられています。そこから「チョードゥオック」(庶民の言葉で「商売繁盛」の意)という市場が形成され、夫人の名声と結びつきました。地元の人々は感謝の意を込めて廟を建て、朝廷に奏上して夫人に冊封を願いました。阮朝時代、バフオンチャオ夫人は二度にわたり王から神として冊封され、最初は成泰6年(1894年)に「中等神」とされ、後に啓定4年(1919年)に「上等神」の美号を加封されました。
夫人の功績に感謝して、ダナンでは毎年、夫人の名にちなんだ二つの伝統祭礼が行われています。ひとつはフオックアム村(タンアン社)で旧暦1月11日に行われる「コーバチョードゥオック」の行列、もうひとつは故郷のカーンミー村(ヴーザ社)で夫人の誕生日(旧暦2月25日)に盛大に催される祭りです。これら二つの行事は、夫人が生まれたフィエムアイ(ヴーザ社)と、夫人が顕霊して民を助けたフオックアムとを結ぶ、神聖な信仰の絆を形づくっています。
祭礼における伝統的な儀式
バーフォンチャオ祭りの祭礼部分は厳粛に執り行われ、村人たちの神への敬意が表されます。儀式の一連は通常、旧暦2月24日(祭りの時期)から始まり、旧暦2月25日まで続き、多くの精神的価値を持つ伝統的な祭儀が含まれています。
- 陰霊祭礼(安寧祈願祭):祭りの始まりは陰霊祭礼であり、亡くなった魂を追悼し、国の安泰と人々の平和、そして故人の魂の解脱を祈ります。この儀式は「陰陽調和」の人文精神を表し、万人の豊かな生活への願いを込めています。
- 女神輿行列:厳粛な雰囲気の中、村人たちはバーフォンチャオを祀る神殿周辺で女神の輿を巡行します。輿は豪華に飾られ、その上には女神の位牌(または像)が安置されます。村の長老や若者たちが輿を担ぎ、先頭には旗や傘、太鼓や銅鑼の音が鳴り響きます。数百人に及ぶ行列は荘厳な光景を生み出し、多くの人々を引きつけます。この儀式は、民間信仰における女神への敬意とその功徳を称えるものです。
- 灯籠流し:夜には、人々が女神を祀る神殿の傍らを流れるヴーザ川で灯籠流しを行います。何百もの灯籠が灯され、川面に浮かべられ流れていく様子は、女神バーフォンチャオへの祈りと感謝を象徴しています。川に揺らめく灯火が幻想的で神聖な雰囲気を作り出し、祭りに詩情を添えます。
- 女神祭礼(大祭):旧暦2月25日の朝、神殿でバーフォンチャオへの主要な祭礼が行われます。供物は香、灯、果物、祭品に加え、地域の習わしによっては生贄も用意されます。祭礼を司るのは村の信頼厚い長老たちで、女神の功徳を讃える祭文を読み上げ、五穀豊穣と人々の安寧を祈ります。この祭りの特徴は、供物を捧げる役割を担うのが村の徳の高い娘たちである点です。多くの地域では男性が行うのに対し、ここでは女性が務めるのが特異とされています。
この独自性は、生前にバーフォンチャオが子どもたちを深く愛し、歌舞や舟競漕を好んだという伝承に由来しています。そのため、後世の人々は、純潔な少女たちに祭礼を奉仕させることで女神への敬意を表しています。祭りの期間中、少女たちは家族や学校(在学中の場合)から特別に休暇を与えられ、全身全霊で女神への祭礼に参加し、村の独特な風習と深い敬虔の心を受け継いでいます。
祭りの活動と特色ある民間遊戯
厳粛な儀式の後には賑やかな祭りの部分が続き、観光客や村人たちが活気あふれる祭り文化の雰囲気に溶け込みます。祭りの日のカーンミ村は、色とりどりの旗や花で埋め尽くされ、太鼓や銅鑼の響きと歓声がこだまします。さまざまな文化活動、スポーツ競技、魅力的な民間遊戯が次々と行われ、参加者に豊かな体験をもたらします。
代表的なプログラムとしては、ヴーザ川での伝統的なボートレースがあり、多くの漕ぎ手が参加して競い合います。また、中部地方特有の民謡「バイチョイ」が披露され、竹の小屋の上で歌合戦と遊戯が同時に行われます。さらに、祭りの開幕を華やかに飾る獅子舞・龍舞の演舞、夜には川面に無数の灯籠を流す幻想的な灯籠流し、その他にも綱引き、ブランコ、目隠ししてヤギを捕まえる遊びなどの賑やかな民間遊戯が行われます。加えて、来訪者は民俗芸能の公演やハットボイ(古典演劇)の観覧、伝統料理の屋台巡りを楽しむことができ、色鮮やかな祭り文化の絵巻が広がり、参加者の心に深い印象を残します。
祭りの役割と文化・観光的価値
ダナンの人々にとって、バフオンチャオ女神祭りは単なる信仰行事ではなく、欠かすことのできない精神的糧となり、地域社会の精神文化生活において重要な役割を果たしています。
この祭りはベトナム人の母神信仰と結びつき、「水を飲むときはその源を思え」という祖先への感謝の道徳観を体現するとともに、先人への敬意と感謝の念を示し、安穏で豊かな生活、国の安泰と民の平和への願いを託しています。
祭りを通じて、古来の祭祀儀礼から民謡、特色ある民間遊戯に至るまで、多くの貴重な伝統文化的価値が保存・継承されており、村落の絆を強め、地域社会の団結精神を固める一助となっています。

遺産の観点から見ると、バフオンチャオ女神祭りは、2020年に文化・スポーツ・観光省によって正式に国家無形文化遺産として認定されました。
この顕彰は、祭りが民族文化の宝庫において重要な位置を占めることを確認するものであり、同時に地域が新たな時代において祭りの価値を保存・発揮し続けるための原動力となっています。行政と住民はこれを誇りであると同時に共通の責務と捉え、祭りの保存と修復に不断の努力を注ぎ、物質的価値(祠堂、女神の陵墓)と無形的価値(祭礼儀式、伝承、民間芸能)の双方を重視しています。
あわせて、祭りの広報・紹介活動も強化されており、バフオンチャオ女神祭りをダナン独自の文化・信仰観光資源として発展させ、各地から訪れる観光客が地域文化を体験し理解できる機会を提供しています。
言うなれば、この祭りは地域にとってかけがえのない文化遺産であると同時に、持続可能な観光を発展させる大きな潜在力を秘めており、伝統豊かなダナンの土地と人々の姿を広く世界に紹介する役割を担っているのです。
ダナン市観光促進センター